君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
高ぶる気持ちを落ち着かせようと、スケジュール帳を取り出す。
早く発車して欲しい。
いたたまれない気持ちで一杯だ。
そんなことを思いながらも、手帳越しに櫻田を見ると何やら考え事をしている様子。
櫻田には分からないんだろうな。この俺が今、こんな気持ちになっているなんて。
...ちょっと待て。今日初めて櫻田の顔をよく見たが、目の下の隈、すごくないか?
ちょうど列車の発車時刻となり、車掌のアナウンスと共にゆっくりと走り出す。
出張の日に寝不足で来るなんて信じられないやつだ。...でも、櫻田のことだ。きっとプライベートな理由で寝不足とかはないんだろうな。
それに、隣に俺がいる以上どんなに眠くなっても寝ないんだろうな。
「さて、と。櫻田、寝ろ」
「...え?」
突然話し出した俺に目を真ん丸くさせ、驚く櫻田。
こいつ、朝鏡の前で化粧してて隠せると思ったのか?
「俺も寝るから」
こう言って俺も寝れば、さすがの櫻田も寝るだろう。
そう思った俺はすぐに眠りに入ったかのように、狸寝入りする。
櫻田が寝てくれたら、仕事をしよう。
まず君山部長に連絡をして...。
頭の中で、何を優先的に行うべきか考えていた時、隣から突然聞こえてきた声。
「お仕事、頑張っている東野さんは素敵ですけど、あまり頑張りすぎて身体を壊さないで下さい...ね?」
「......」
語り掛けるように、俺だけにしか聞こえないように囁くその声に、思わず瞑っていた目を開いてしまいそうになる。
な、に言ってんだ。こいつは...。
どうにか気づかれないよう、そのまま寝たふりを続ける。
しばらくすると、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。
ゆっくりとまぶたを開け、櫻田を寝ると熟睡している様子。
...やっと寝たか。
「それにしても...」
さっきの櫻田の言葉を思い出す。
驚いた。まさか櫻田があんな言葉を掛けてくれるとは、思ってもいなかったから。
そしてそんな些細な言葉にこんなにも、過剰に反応してしまった自分。
不味いかもしれない。
3日間も櫻田と一緒にいたら、自分の気持ちを押さえられないかもしれない。
あんなに気付かないようにしてきたっていうのに...。