君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
なんで櫻田にはこんな話をしてしまうんだろうか。

今までこんな話、誰にも話したことなんてなかったのにな。


「...じゃあよかったですね」


「えっ?」


パレードを見ていた目線を、隣にいる櫻田へと向ける。


櫻田もパレードではなく俺を見つめていて、自然と視線が絡み合う。



「今日は良かったですね!たまには休むことも大切ですよ!」


そう話ながら笑顔を見せる櫻田。

その言葉を聞いた瞬間、昨日の列車の中での櫻田の言葉が、ふいに頭をよぎる。


いつも周りからは『お疲れ様』や、『いつも大変だな』。そんな言葉を掛けられてきたけど、さっきみたいな言葉を掛けてくれたのは櫻田が初めてだった。


「...そうだな」


そんな言葉を掛けられたら、嫌でも口元が緩む。


それ以上、櫻田と言葉を交わすことはなく、ただ二人でずっと夜のパレードを見ていた。

こんなに充実した休みを満喫したのは、いつ以来だろうか。


きっとこんな一日を過ごせたのは、櫻田のおかげだと思う。
そう思うと嫌でも認識してしまう。

惹かれてるって。

櫻田に落ちてしまったって...。



ーーーーーーー

ーーー


結局副社長からもらった休暇は1日残して、大阪を後にした。


「あれ?なんでか東野がいる。幻?」


「幻じゃねぇよ」


次の日、帰りがけに社に寄ると藤原がまるでオバケでも見るような目で
俺を見てきた。


「思ったより早くまとまってな。1日切り上げてきたんだ」


「ふ~ん。...で?どうだったわけ?櫻田と二人っきりの甘い出張旅行は」


藤原の言葉に思わず力が抜ける。


「...なんだよそれは。仕事だって」


何事もなかったように振る舞う。

藤原に気付かれたら、色々と面倒だ。

それに、ただ気付いただけでどうにかしたいとかは思えない。

またあんな思いなんてしたくない。


「なんだよ、つまんねーの。俺達さもう30過ぎてんだぜ?浮いた話ねぇなんて悲しくねぇ?」


「別にならないね。それに藤原の方こそどうなんだよ。いつも俺ばかり聞きやがって」


昔からそうだ。
藤原は自分のことをあまり多く語らない。
その癖、人のことばかり聞き出す。
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