2LDKの元!?カレ
それから彼は、自分のデスクの椅子を引いて座ると、何もなかったかのように仕事の準備を始める。
私は翻弄されているなと感じながらも、それを悟られないようにすました顔で先ほどの作業に戻る。
キーボードを叩きながら、まだ落ち着かない鼓動をなだめるようにゆっくりと深呼吸を繰り返した。
チラリと西野くんの方を盗み見ると、どこかへ電話をかけている。
相手は鏑木圭のようだ。
難関不落はずだったの取材対象の彼と楽しげに話をする関係になれるなんて、ほんの数週間前までは想像すらできなかった。
電話を切ると西野くんはあからさまにため息をつく。
「……今夜来ないかっていわれました」
「ル・シエルに?」
「はい。話がしたいので食事でもしながらどうかって。でもオレ、今夜は志保子さんと一緒にいたいし……断ろうかと」
「ダメだよ。それ、仕事だもの」
私はきっぱりという。
西野くんは「ですよね」と笑った後、でも、と言葉をつづける。
「それは分かってるんですけど。オレ、今夜は志保子さんと夕食を食べたいから、鏑木さんに志保子さんも一緒でいいか聞いてみます」
「え、いいって」
私の制止も聞かず、西野くんは受話器を上げるとリダイアヤルボタンを押した。