2LDKの元!?カレ

「だからもう、帰るなんて言わせませんよ」

撮影用の料理が見られると知ってしまったら、帰るわけがない。

西野くんもそれをわかっているくせに、私の腕をしっかりと拘束するようにつかんで離さないのは私が照れて困るのを楽しんでいるからなのかもしれない。

「……もう、分かったってば。だから少し、離れてよ」
「いいじゃないですか。恋人同士なんだし」
「それはそうなんだけど、駄目よ。仕事で来たんでしょ?」

ぴしゃりと言ってのければ、西野くんもそれ以上は絡んではこない。

そうでした、といわんばかりにパッと手を離す。

そんな私たちのやり取りを、何も言わずに見つめていたコミヤマさんにお待たせしましたと頭を下げると、バーカウンターまで案内してくれた。

「申し訳ございませんが、準備ができるまでこちらでお待ちください」

高さのあるスツールに二人並んで座ると、カウンターの向こうにいるバーテンダーから丁寧な挨拶を受ける。ゲストという立場でもないのにと少々恐縮しながら、私たちはお任せでノンアルコールのカクテルをお願いした。

私は甘めのもの。西野くんは甘くないもの。

どんな仕上がりになるのだろうと、目の前で優雅に振られるシェイカーを見つめながら、とてもワクワクとした気持ちになる。


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