2LDKの元!?カレ

「お待たせいたしました。どうぞ」

スッと差し出されたグラス。

私にはココナッツミルクとパイナップルジュースで作られたバージン・チチ。

クラッシュドアイスを詰めたオールドファッショングラスに、パイナップルとレッドチェリーが飾ってある。とてもかわいらしい。

西野くんにはサラトガ・クーラー。琥珀色の泡がスタイリッシュなグラスの中で踊っている。

「ありがとうございます。いただきます」

そっと口を付けると、甘くトロピカルな香りが口の中に広がって幸せな気持ちにさせてくれる。

「……わ、おいし」

思わず声を漏らすと、バーテンダーは満足そうな笑みを浮かべた。

立ち居振る舞いや醸し出す雰囲気から無機質で冷たい印象を持っていたけれど、笑うととても優しい顔になるようだ。

そんな彼の顔をもう一度チラリと見る。すると途端に目が合って思わずドキリとした。

「お気に召しましたか?」
「カクテルのことはあまり詳しくないんですけど、チチってこんなにおいしかったかなって、ビックリしちゃいました」
「ありがとうございます。おかわりなさいますか?仰っていただければ、別のカクテルも御作りいたしますよ」

そういってもらえたら、もっとたくさん飲んでみたくなるのだけれど。

「いえ、もう充分です。次は、プライベートで飲みに来ますので。その時はまたお勧めのカクテルを作ってください」
「承知いたしました」

ノンアルコールを飲んでいるのに頬が熱くなるのは、彼の魅力に酔わされたからなのだろうか。改めて思うのは、ル・シエルには上質なスタッフが揃えられているのだということ。

本当に、素敵な店だ。

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