2LDKの元!?カレ
用意された料理を食べ終えると、鏑木に見送られて店の出入り口に向かう。
途中西野くんがトイレへ行き、私は鏑木と二人きりになった。
すでに閉店した店内には客の姿はない。
数名のスタッフがフロアーの後片付けをしているのを眺めながら西野くんに早く戻ってきてほしいと祈った。
気まずい沈黙が続く中、鏑木は唐突に言葉を発した。
「あんたさ」
ビクリと肩を震わせると、怪訝そうな顔をする。
「そんなに驚くことはないだろう。別に取って食ったりはしないさ」
「……すみません」
私が頭を下げようとすると鏑木は手でそれを制止する。
「別に謝らなくていい。ひとつだけ、いいだろうか」
「何ですか?」
「彼のこと、もて余すようなら早めに手放すことだ。欲しがる人間は沢山いる」
「……それって、仕事とプライベートどちらのことをおっしゃっているのでしょうか?」
鏑木の言葉の真意が汲み取れずに聞き返す。すると彼は事もなげに言う。
「どちらもだ」
「どちらもって……仕事のことならまだしも、プライベートなことまであなたに言われたくない」
失礼な男だと思った。
「それに彼はモノじゃないし、あなたが心配しなくてもちゃんと自分の将来を考えていますよ」
「なんだ、よくわかっているじゃないか」
仕事相手でなかったら、もっと反論していただろう。グッと言葉を飲み込む。するとちょうど良いタイミングで西野くんがトイレを済ませて戻ってくる。
「お待たせしました……なにか、ありました?」
「なにもないよ」
私は西野くんの腕を掴むと、鏑木から目をそらす。
そして彼の陰に隠れるようにして歩いた。
「今日はありがとうございました。撮影の日程についてはまた後日ご連絡いたします」
コミヤマさんと鏑木に見送られてル・シエルを出る。
それから私たちは西野くんのアパートへと向かった。