2LDKの元!?カレ
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「――なるほどね。それで、同棲を始めたわけか」
翌朝。私は社内の化粧室で、みちるに西野くんと同棲を始めたことを話した。
「聡さんと暮らしていたことに関してはお咎めなしだったんでしょ?」
「うん、そう」
みちるはシャネルのポーチからリップグロスを取り出して、その唇にたっぷりとのせる。それからゆっくりと唇を合わせると、くるくるとグロスのキャップを閉めた。
これから打ち合わせがあるわけでもないのに、メイク直しに余念がない。私のメイクポーチはカバンの中に入ったままだというのにだ。
こういう姿を見ると、その時は自分もちゃんとしなければと思うのにもかかわらず、時間が経つとついついさぼりがちになってしまう。私の悪い癖だ。
「まあね、西野は志保子に惚れてるから。よかったじゃない。すべて丸く収まったんだから」
「そう……なのかな。愛されているって実感はあるんだけどね」
「けどなに?」
「うん、色々とあるわけよ。今朝は朝から、その……しちゃって」
いいよどむ私に、みちるはワザとらしくにやりと笑って見せる。
「あらそう。それはどうもごちそうさま」
「もう。本気で悩んでるのに。体力的に無理なの、分かるでしょ?」
「ああ、はいはい。今の志保子の悩みはただのノロケにしか聞こえないよ。本当に辛いなら西野に直接言えばいいじゃん」
「……そうだね」
みちるの言うことは正論だ。
けれど、あんな理由で同棲を始めた私にとって、自分の意見を主張することに対して少なからず遠慮がある。でもきっと、遠慮があるくらいの方が上手くいくのだはないだろうか。
そう思って私は、彼との生活を続けていったのだ。