2LDKの元!?カレ
実は私が連載を担当している朝カフェご飯をムック本として出版する話が来たのだ。
編集長は私以外の部員に本の編集を担当させるつもりでいたのだが、私がそれを阻止した。
思い入れが半端ない私の企画。それに第三者が手を加えるなんて絶対にいやだった。
こなせる限界ギリギリの仕事量。でも、どうにか消化できている。
ラグジュアリーナイトの方はほぼ順調に進んでいて、ライターの長谷さんは事前取材した内容を思い通りの文章にしてくれた。そしてもうすぐ撮影に入る予定だ。
息つく暇もない。こんな風に忙しさにあえぎながらも、楽しみで仕方がない自分がいる。
ポケットを探るとミルク味のキャンディーが二つ入っていて、私はそれを口に入れた。
カフェに到着すると、すぐさまオーナーに原稿に目を通してもらう。
「率直なご意見をお願いします」
「とてもいいと思うわ。店のこと、こんなふうに書いてくださってありがとうございます」
オーナーは満面の笑みを浮かべて頭を下げた。
「よかった。こちらこそありがとうございます。沢山の人に美味しい和生食を食べてもらえたら嬉しいです。」
私が原稿の確認にメールや郵送に頼らないのは、生の声が聞きたいから。
そして、この笑顔が見たいからなのだ。
「お忙しい時間帯にご協力いただいてありがとうございました。雑誌が出来上がったらお送りしますから」
私はもう一度取材のお礼を伝えると、店を後にした。
オーナから食事を用意するからと言ってもらえたのだが、断った。西野くんが待っているから。
私は電車に飛び乗ると、空いているシートに疲れ切った体を沈めた。