2LDKの元!?カレ

 終電間際になって、私はPCの電源を落とした。

「……帰らなきゃ、電車なくなっちゃう」

これだけ遅くまで残業していたのにもかかわらず作業が進まなかったのは、日中のミスが尾を引いていたからだ。

ふとした瞬間に思い返しては、後悔ばかりを繰り返している。

こんなふうに心が沈んでいると、体まで重く感じるのかもしれない。

重い足取りで駅まで向かい地下鉄に乗り込む。ドア付近に立って、軽く目を閉じるとそのまま体を預けた。

やがて下車駅になり、私は押し流されるように電車を降りた。

下を向いたまま階段を上り、混雑する改札を抜ける。

そこで私は、ようやく自分の間違えに気が付いた。

「ここ、中野じゃない」

私が降りたのは、使い慣れた三軒茶屋の駅だった。

「……ぼんやりしてたからだ」

その場に立ち尽くしたまま、自嘲気味に笑う。

そんな私を改札から吐き出される人の流れが勢いよく追い越していく。

ある人は迷惑そうに顔をしかめながら。またある人は肩にぶつかりながら。

その時、最終電車を知らせるアナウンスが流れた。

これを逃したら、帰る電車はない。

早くホームへ戻らなきゃと思うのに、疲れた体は言うことを聞いてくれなかった。

どうせ、もう間に合わない。そう諦めた時、誰かが私の名前を呼んだ。

< 212 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop