オクターブ ~縮まるキョリ~


永山くんは、席に座ってひとりで音楽を聴いていた。
何を聴いているのかは分からないけど、きっとイヤホンからは彼のお気に入りの曲が流れているのだろう。
無表情といえば無表情だけど、なんとなくリラクックスしているように見えたからだ。


「……詩帆ちゃん、ちょっと聞いてる?」

「へ?あっ、ごめん、何て?」

「だからぁ、今日、みんなで帰りにどっか寄ろうって言ってたの!
もー、どうしたの?もしかして、永山くんに見とれてた~?」

「ちょ、ちょっとやめてよ!」


由美ちゃんはニヤニヤしながら私の目の前で指をくるくると回す。
とんぼを捕まえる為の指使いと同じだ。


「別に、ただ永山くんの話が出たからちょっと見てただけだよ…」

「ふーん?まぁいいけどねー?
確かに永山くん、けっこうイケメンだもんねえ」

「だから、別に見とれてたわけじゃ…」


けれど実際のところ、永山くんは単体で見ると、実はかなり整った顔立ちをしている。
春瀬一輝のような華やかさは無いけども、その代わりにクールさが際立っているような感じだ。
学校一のイケメンは間違いなく春瀬一輝なのだが、永山くんもきっとモテる部類に入るのだろう。

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