オクターブ ~縮まるキョリ~
「こ、これって『席替えあるある』じゃん…」
席替えしたのに同じ席。
自分の席が気に入っていたとはいえ、なんだかちょっと拍子抜けしてしまった。
まぁ荷物を移動させなくていいから、ラクといえばラクでいいか。
あとは、周りに誰が来るかが問題なんだけど…。
「詩帆ちゃん、席そのままなんだ!?ウケる!」
由美ちゃんは席に座った私を見て笑った。
「ね、ちょっと拍子抜けしちゃったよ。由美ちゃんはどこの席になったの?」
「私は視力悪いから、前の方だよ。じゃね!」
「はーい、いってらっしゃい」
教室という狭い空間で、「いってらっしゃい」も何もないと思うけど。
この席替えが、実は色んな人間関係に影響することも私は知っている。
小学校の時も、中学校の時も、そうだったから。
私が自分の席に座っていると、思いも寄らない人物がこちらにやってきた。
「よいしょ…っと。あ、俺ここの席になったから。よろしくな!」
そう言って私の左隣、窓際の席に座ったのは……
「は、春瀬くん……」
私が憧れてやまない、あの彼だった。