オクターブ ~縮まるキョリ~
開かれた扉の向こうに立っていたのは、私にボールを当ててきた男子だった。
「……あ、ごめん、お取込み中だった?」
春瀬くんと私の顔を交互に見て、彼はそう言う。
「…いや、そんなことないけど」
春瀬くんがそう言って立ち上がると、その男子は安堵した様子で部屋の中へと入ってきた。
「よかった。樫原、マジでごめんな。お前の横に居たヤツ狙ってたんだけど、コントロール狂って…」
「ううん、私がボーっとしてたのが悪いんだし、もう大丈夫だよ」
それに、春瀬くんとぐっと近づけた気がするから。
私が笑ってみせると、その男子も申し訳なさそうに笑ってくれた。
「…春瀬くん、やっぱりみんなのところ戻りなよ。
このまま居たら、心配したみんながどんどん保健室に来ちゃうかも」
冗談めかした私の言葉に、春瀬くんは笑って頷いてくれた。
「…分かった。じゃ、ゆっくり休んでなよ」
「うん、ありがとう」
そうして、春瀬くんたちは保健室から出て行った。
保健室は、静寂に包まれる。