オクターブ ~縮まるキョリ~
「体調はもういいの?」
永山くんは上履きを直しながら言う。
首にかけたイヤホンがぶらぶらと揺れているのを見て、彼が音楽を聴きながら眠っていたことが想像できた。
「うん、大丈夫…ていうか永山くん、私がここに居たこと気付いてた?」
「うん。春瀬がすげぇ勢いで入ってきたから。嫌でも目が覚める」
「そ、そうなんだ」
「『せんせー、居ないんですかー!鼻血ー!貧血ー!』って叫んでた」
「えっ」
は、春瀬くん…
さっきは「鼻血を隠せなくてごめん」なんて言ってくれたけど、現場に居なかった永山くんにまで鼻血バレてるよ…。
「で、急に静かになったからさ、大丈夫かなと思ってちらっと覗いてみたんだけど…」
永山くんはそこで言葉を切る。
次の発言を待って私が首を傾げると、彼は急に真剣な眼差しをこちらに向けてきた。
「……あんた、春瀬と付き合ってんの?」