オクターブ ~縮まるキョリ~
「……え…?」
名前を呼ばれて、私は目を丸くした。
男の子に下の名前を呼ばれるなんて、これまでに無かったから。
気恥ずかしさに襲われると同時に、急に心臓がドキドキと高鳴る。
これまで「樫原」って私のことを呼んでいた永山くんが、突然下の名前で、しかも呼び捨てで呼ぶなんて。
何と言っていいかわからず、ただ永山くんの真剣な瞳を見つめ返す。
ひとつの意思を固く持った、まっすぐな眼差しだった。
「……春瀬がそう言ってたんだ」
「…えっ……?」
永山くんの発言に、私の声のトーンは不自然に持ち上がる。
永山くんに名前を呼ばれたことに驚いていたところに、春瀬くんの名前が出てくるなんて。
「春瀬が、樫原のこと『詩帆』って呼んでたんだ」