オクターブ ~縮まるキョリ~
昇降口に出ると陸上部の掛け声が聞こえてきた。
「ラスト!ファイットー!!」
「ファイットー!!!」
見ると、校庭の端からの短距離を、陸上部の人たちが4人ずつ全力疾走してくところだった。
みんな怖いくらいに真剣な表情でダッシュをこなしていく。
マネージャーの子が掛け声と共に手をパンと叩くと、同時に地を蹴り風のような早さで駆けていく。
手の音に合わせて次々と走り出すその様は、まるでマシンガンのようでもあった。
いくつもの弾が、ガンガンと発射されていく。
見ていて気持ちの良い光景だった。
残りの弾…もとい列が少なくなった中に、私は春瀬くんの姿を見つけた。
炎天下の中、春瀬くんは白のTシャツの裾で額の汗をぬぐう
ちらりと見えたわき腹に、思わずドキリとする。
そういえばあのTシャツ、私の鼻血がついちゃって、洗濯させてもらったんだっけ。
お風呂場で手洗いする前に、それを広げてこっそり自分の体に当ててみて、その大きさにちょっとドキドキしたりして。
さすがに、匂いを嗅ぐのは良心の呵責があって、しなかったけれど…。