オクターブ ~縮まるキョリ~
はっとして後ろを振り返ると、そこには、
「永山くん!?」
右隣の席の彼の姿があった。
自転車の横に立ち、こちらを見ている。
幻でも見ているのではないかと思い、私は彼の全身を繰り返し上下に観察する。
グレーのVネックのTシャツに、紺色の七分丈のパンツ。
足元はサンダルではなくスニーカー。
確かに、そこに居るのは、永山くんだった。
それは、私の目の前に居る3人の女子たちの反応からも明らかだった。
「永山……なんであんたがここに居るのよ。」
「バイトの帰り。」
「帰りって…こんなとこ、普通わざわざ通らないでしょ。」
「近道だから。」
永山くんの冷めた目線に、私は大きな安堵感を覚えた。
今まさに「痛い目」に遭うはずだった私を、彼は救ってくれたのだ。
まさに奇跡のようなタイミングで、彼はここに現れた。