オクターブ ~縮まるキョリ~
「…ごめんな、勝手なこと言って。」
永山くんは、私の思考を現実へと引き戻した。
はっとして、その瞬間、自分が何かを期待していたことに気付いた。
「何か」の正体は自分でも分かっているのだけど、認めるのは恥ずかしくて、私は考えることをやめた。
「ううん、そんな、全然……ちょっとびっくりしちゃったけど。」
「だよな。付き合ってなんかないのに、勝手に彼女にして。悪かった。」
「あ、でも……う、嬉しかったから…」
「……えっ。」
永山くんの感嘆の声に私ははっとする。
な、何を言っているんだ私。
何、とんでもないことを言っているんだ…!
「いや、あの、違うの!た、助けてもらえたことが嬉しかったって意味だからね!?
別に、彼女だって言われたことが嬉しかったんじゃないから!」
「あ、ああ……」
慌てて自分の発言に付け加えをすると、永山くんは小さく溜め息をついて目を逸らした。
どうしよう、変なこと言っちゃった…。
今の、「彼女扱いが嬉しかった」って聞こえたよね、きっと。
永山くん、迷惑に決まってるよね。
永山くんは優しくてクールでかっこいけど、女の子と付き合うとか、そういうことには興味なさそうというか、むしろ女ギライっぽいというか。
私の発言で、きっと気を悪くしたに違いない。
余計なことを言って、空気を悪くしてしまった。
そっぽを向いて難しい顔をしている永山くんを見て、私はうなだれた。