Wonderful DaysⅠ
「いつまでも突っ立ってないで、座ったらどうだ」
「はい」
促されて向かいの席に座れば
「いらっしゃいませ。こちら、アフタヌーンティーのセットでございます」
後ろで待っていた店員が、メニューではなくアフタヌーンティーのセットを持ってきた。
俺の前に順番に並べていき、砂時計を置くとお辞儀をして去っていく。
「……………………」
その後姿を見送ってから、無言で目の前の人物に視線を移すと
「どうした」
紅茶を飲もうとしていた手を止めて、不思議そうに尋ねてくる。
「……いえ、なんでもありません」
俺の返答に「そうか」と微笑んで、ティーカップに口をつけたマークさん。
彼にはなんでもないと言ったが、なんでもないわけがない。
これを注文したのは、間違いなくこの人だ。
けれど、いつ頼んだのかが問題で。
このセットを用意するのに、最低でも5、6分はかかるはずなのだが……
その時間、俺はまだホテルには到着していなかった。
いつから、俺の行動を監視していたのか。
ある疑問が頭を過ぎったが、きっとこの人にはうまくはぐらかされてしまうだろうから。
「いただきます」
何も聞かずに、ティーポットへと手を伸ばした。