Wonderful DaysⅠ
「勝ち逃げだ? 一度も俺に勝てたことがねぇくせに笑わせるな」
その白石の目を見ながら、皮肉の意味を込めて口角を上げた。
普段は無表情で、何を考えているのかわからないと言われている俺だが
「勝てなかったのは、てめぇが弱いだけだろうが」
「なっ……」
今は、自分でもはっきりと感情が表に出ているのがわかる。
「今、てめぇに構っている時間はねぇんだ。そんなくだらない理由で、邪魔するんじゃねぇ」
周囲の野次馬達の視線も、突き刺さるように俺に向けられていて。
言い返してこない白石の顔は、悔しそうに歪んでいた。
「……くっ……」
少なくとも、これ以上ないくらいに俺が苛ついているのは伝わっているらしい。
先ほどまでの勢いが失せた白石に
「てめぇが納得してなくても、今の神威を率いているのは葵なんだよ」
いい加減にしろ、と怒気を含んだ声を返し、バイクのグリップに手を伸ばす。
「何度も同じことを言わせるな」
これ以上無駄な時間を費やしたくなかった俺は
「なっ、結城! 逃げるのかよっ!!」
白石の返事を聞くことなくその場を走り去った。