桜舞う
「姫様。武士の妻としてあろうとすることはとてもご立派です。しかし、私には隠さず頼って下さいまし。私は姫様の侍女なのですから。なにより、吉辰様がお帰りになられたとき姫様に異変があれば吉辰様が御心配をかけることになります。」

吉辰様に御心配をかけてしまう。

それは鈴姫の心にずっしりと落ちてきた。それこそ武士の妻としてあってはならないことだ。肝心なことに気づいていなかったことに鈴姫はさらに落ち込んだ。
しかし、早く今の状況を打破しなければならないと思い、思い切って鈴姫は松江に言った。

「松江。今夜から寝るときそばにいてくれぬか?」
「はい、姫様。喜んで。」

松江はにっこりと笑って答えた。

その夜から、鈴姫は松江と同じ寝室で寝起きを共にし、鈴姫がそれでも寝れないときは、松江が鈴姫の手を握ったりすることで落ち着かせていた。鈴姫は子どものような自分を恥じていた。いつも母、姉のような松江につい甘えてしまう。そんな鈴姫に松江はこう言った。

「姫様のお世話ができて本当に幸せですよ。」
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