小悪魔な彼
「三浦先生ー」
放課後になると、あたしは職員室へ行った。
数学の教科書を持って……。
普段なら、峰岸くんと一緒に帰るが、あたしにはこっちの用事のほうが大事なので、峰岸くんには一言、先に帰ってもらうようメールを送っておいた。
「雪本か。どうした?」
「数学。教えてもらいたくて……」
「ああ…もうそんな時期か」
ちらりと数学の教科書を見せて、おずおずとお願いをする。
テスト前になるとこのお願いは恒例になっていて、三浦先生はとくに驚くことをせずに持っていた資料を机の上に置いた。
「どれ?」
その場で教科書を見せる。
さすがに、どこか空き教室に移動して、ということはしない。
三浦先生は若い男の先生だし、女子からも絶大の人気。
だからこそ、生徒と二人きりになるようなことは絶対にしないのだ。
「えっとですね、これなんですけど……」
あたしはあらかじめ、チェックしておいた問題を指差した。