思い出したい恋心 〜三十路女の甘え方〜


「お仕事だったんですか?」


話を切り出したのは私。


「うん、今日は平日だからねぇ。そちらも?」


「はい。お盆休み返上で出勤でした」


「お互いしがないサラリーマンか…って、俺はサラリーマン。君はOLさん?」


「ええ、しがないOLです」


平日の仕事帰りにフラッとこんな飲み屋にひとりで入れる女性なんて、世の中にそう多くない。



もうこういうことは平気な年頃になった。

三十路はあらゆる醍醐味が塗れている。



隣にいる同じしがないサラリーマンさんも恐らく似た年齢だと思う。

あまり出くわさないところを見ると出張かしら。



「出張ですか?」



ズケズケと物を申せるようになったのも三十路前後だと思う。

聞きたいことは聞いた方がいい精神が突出してきたのも最近のことだ。
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