あなたは笑顔で…
再会



「日差しが強くなってきたわね……」



私はニンゲンの世界に来てから、毎日いろいろなところに行って花を見て過ごしていた。


やっぱり図鑑で見るより本物の花の方が綺麗。


仕事をサボってる感があるけれど……たまにはいいわよね。


最近仕事ばかりだったし。


ゆっくりしてもバチは当たらないわ。



「今日はどこに行こうかしら?」



ベンチに座って考える。


初めて座った、あの桜の木があるベンチ。


何となく愛着が湧いたのよね。


不思議だわ……



「あれ、君……」



聞き覚えのある声に顔を上げる。


前に会ったときと同じ、明るい笑顔がそこにあった。



「おはよ」


「……今の時間帯はこんにちはではないのかしら?」



そうかなー?と言って笑う。


確かに微妙な時間帯ではあるけれど…



「また、病院を抜け出して来たの?」


「まぁねー」



ケラケラと笑う彼。



「駄目、ではないの?体のどこかが悪いのでしょう?」


「んー、まぁね。でもこもってばかりじゃ体に悪いでしょ」



……そういうものなのかしら?



「そういえばさ、結局病院来てくれなかったね。忙しかったの?」


「そうでもないわ」



実際、毎日ぶらぶらしているだけだもの。



「じゃあ何で来てくれなかったの?」



待ってたのに、と言ってまた笑う。


……よく笑うわね。



「だって……どこの病院か知らないわ」



知らないものは行けないわ。



そう言うとキョトンとした顔になって、何故か笑い始めた。


しかも思いっきり。



「……何故笑うの?」


「あははっ……ごめんごめん。その通りだな、と思って」



だからと言ってそんなに笑うものなのかしら?


なんかムッとする……


理不尽だわ。






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