君のところへあと少し。

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「ナリ?どうしたの?」

急に声がして飛び上がるほど驚く。

「いや、水ねぇかなーと。」
「あるよ、引き出しの方。あ、プリン食べる?ナリ好きだったから作ったの。」

衣擦れの音がする。

服を着てるとしたら、今は振り向かない方がいい。

「いた、っ!」

不意に声が変わって気になって、ハルのそばに駆け寄る。

「大丈夫か…?」

バッチリと見てしまいました。

ま、今更照れる仲じゃないけど。

「スケベ。なに見てるの?」
「ん?パンツ履いてるハルの姿。」

「…プリンあげない。エロオヤジ。」
「そのエロオヤジに“もっと〜”って強請ったのは誰でしたっけ?」


全身が朱に染まる。

「ばっ…」
「バカって言う人の方がバカなんですー、だよな?」

あぁ、こんな感じ。
言いたいこと言い合って、バカやって、でもちゃんと愛し合えて。

ハルとなら、こういう自然な関係でやっていける。

ずっと。

ちゅ、と肩口にキスをして。
後ろから抱きしめる。

「ちょ、ナリ、着替えられないって」
「着替えるな、って意味だよ。」

ようやく手に入れた、宝物。

ハルの心まであと少しだった、ちょっと前のオレ。
頑張ったご褒美はプリンだけじゃ物足りないよな?


「もう1回…じゃなくて何回も。抱かせろ。まだ足りない。」

「うわぁ」

グイッと引き倒すとのしかかって身動きとれないようにする。
「ナリ、待って、あの、」
「あ、彼女なんだからさ、ナリじゃなくて和也って呼べよ、ハル。」
そう伝えたらハルの動きが止まった。

「そのうち、川瀬 波留から三浦 波留にしてやるから、ついてこい。」
胸を弄る手が暖かくて。
抱きしめられた身体はとても正直だから。

「はい…。」


ずっと一緒にいよう。




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