君のところへあと少し。

4

迷惑をかけたくなくて、なるべくならこんなことで連絡はしたくなかった。

でも、限界。

「ヒヨちゃ〜ん」

「どしたの、ハルちゃん。何かあったの?」

ヘルプのメールをしたら日和はすぐ店に来てくれた。
「あ、ナリくんのことでしょ。後でね、奏も来るからね。久しぶりにハルちゃんのココア飲みたいって。」
「ほんと⁉じゃあナリ呼ぼうよ!待っててー!」

すぐに携帯を鳴らす。
留守番電話サービスに繋がってしまい、メッセージを残す。

「ハルです。今から奏がお店に来るっていうので連絡しました。ナリも来てね。待ってます。」


聞いてくれるかな。
来れたらいいな。
もう暫く会ってないもんね。

「途端に元気になったね、ハルちゃん。奏に会いたかった?」
ニコッと笑う日和に申し訳ないと思いながらもうん、と答える。

「いつも一緒だったから…奏が落ち着くまでは、連絡はしない方がいいのかなって。話し聞いて欲しくて。奏じゃなきゃダメなの。」

必死に話すハルを見て、日和はハルとナリに何かあったのだと判断する。

「あたしには話せる?」
「うん。あ、お店ちょっと閉めようか。あんまり他人に聞かせる話しじゃないし…」










「なるほどねぇ。確かにハルちゃんの小さな身体でナリくんを受け入れるのってキツいだろうね。
でもさぁ、大小の差はあれど、男女って対なのよ。男は凸、女は凹ね。必ず合わさるように出来上がってる。

んー、要は慣れとか。あとは準備体操だね。」

「?準備体操?」
「そう。充分に前戯で身体をほぐしてもらうの。あー、遠周りな言い方ってめんどくさいわ。要はね、しっかり濡らしてもらったら、滑りが良くなって受け入れるのが楽になるんじゃないか、ってこと。わかる?」


耳まで真っ赤。
噴火しそう。

それって…

「ナリ君の問題。ハルちゃんは待つしかないよね。」

え…そんなぁ…。


そこまで話したらカランコロンとカウベルが鳴り、奏が入ってきた。

「奏!」

飛びついて抱きついた。
「あはは、ハル、久しぶり。元気そうで何より。日和、ちょっと。」


頭をナデナデしてくれる奏。

どうしよう。泣きそう。


「奏?どうしたの?」
日和の言葉に奏が苦笑いする。
「上着持ってて。一発殴らないと気が済まない。」

奏の言葉にハルも日和も首を傾げた。

奏の後ろには息を切らせて走って来るナリの姿。

「奏⁉ダメだよ、ケンカなんて」
日和の静止に奏は笑う。
「小さい頃からやってきてる、問題ない。」

言い終わると同時に振り向き拳を振るう。

「てめぇ、何カッコつけてんだよ!ハルを泣かせるなってあれだけ言って約束しただろうが‼」


いきなり殴り飛ばされ唖然とするナリを尻目に、今度はハルに向かう奏。

「ハル。」

ギュッと目を瞑る。
叩かれる!…と思ったらフワリと頬に掌が触れた。


「痩せたな、ハル。我慢するな、泣けよ。」

堰を切ったように涙が零れた。


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