君のところへあと少し。

5

この年になって、こんな風にわんわん泣く事なんてないと思ってた。

奏が奏のままで、嬉しかった。

変わってなくて嬉しかった。

わかってくれてて嬉しかった。

会わない時間があっても、奏はハルとナリと繋がってくれていた。


それが嬉しかった。

「バカだなぁ、ハル。ハルはさ、我慢しすぎなんだよ。素直になれ、って俺言ったよね?忘れた?」

「ううん、覚えてる。」

奏に殴られたナリの頬を冷やしてあげながら、言葉を返す。

「どうしたいのか、ちゃんと言いなよ。
ね?」

「うん。」

「ハルは奥手さんだからね。初心だから、しかたないのかなぁ。日和の半分くらいあげたらいいのにね?ね、日和。」

「すみませんね、あけすけで。ナリくん、大丈夫?」

「あぁ。」

力一杯殴られた頬は真っ赤に腫れている。
「バーカ、お前は痛い目に合わなきゃわかんねぇのかよ。
ハルを泣かしたんだから、そんくらい当たり前だろ。」

「奏…相談したい事があるんだ。俺らだけで話せないか?」

やっぱり、ナリにとっても奏は、かけがえのない親友。

「いいよ。時間とってきたから。」


そうやって2人は2階の部屋に入って行った。

多分、さっきまでの日和とハルがしていたような話なんだろう。
時間が過ぎるのをただひたすら待った。











その夜。

ナリのうちに連れていかれて、いきなり。
「ごめん、ハル‼」

目の前で土下座されてしまった。

「え?なんで?」
いやもう、意味すらわからないんですけど。

リビングに正座してナリは大きな身体を小さくしていた。

「今からこっぱずかしい告白するから、聞いてもらえるか?」

「へ?あ、うん、いいけど。えと、とりあえずソファに座ろうよ。何か嫌だ、そういうの。」

手を差し出して引き起こす様に…出来ずに、ナリの腕の中に包み込まれてしまった。


「奏と話しをして、気付いたんだ。自分が間違ってたこと。

よくよく考えたらさ、ハルはオレとするまでは、未経験だったわけだろ?

付き合い始めたからといって直ぐに身体が馴染むわけじゃないし、ハルの身体を考えたらオレは焦って抱いてるだけだったんだ。

もっと時間かけるべきだってことに、悔しいけど奏に言われて気付いた。

ごめん、苦しかっただろ。

やっとお前が手に入った、って気持ちが焦ってたみたいだ。」


抱きしめられたまま、そう告げられてうん、と答えることしか出来なかった。



「ハル。

こんなバカな俺だけど…ついて来てくれるか?」

小さく頷く。

「私、いつもされてばかりで自分からナリにしてあげることがなかった…ヒヨちゃんに相談したら、ナリに聞きながらお互いに身体をほぐし合ってしなきゃダメだって…待ってるだけじゃダメだって教わった。
ごめんね、ナリ。
たくさん我慢させて。
私、平気だから。」


< 62 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop