君のところへあと少し。

6

ハルの言葉にそうだな、その通りだ、とナリはひとり納得して呟く。

そして、腕の中からハルを引き剥がすと居住まいを正し、再び土下座をした。

「ナリ!やめてってば‼」

「いや、やめない。ハル…波留。
一緒に住もう。毎日をオレと共有しよう。もちろん、結婚を前提だから。」

いきなりの言葉にハルは固まる。

「え?」

「別々にいるとさ、すれ違いも増えるし…オレは離れていたくないんだ。
ダメか?ここにハルの荷物持って来て、ここでオレと生活を共有しよう。」


それはつまり…

「プロポーズの返事は?」

「プ…ロポーズ…?」

「今直ぐに結婚は無理だけど、お前の事一時も離したくない。だから、オレのためにここに居てくれ。」

…。


時間が止まったみたいだった。


「はい…。」


それしか言えなかった。
嬉しくて。
ナリに抱きついた。
暫くして、クルッと反転してハルの背中にリビングにひいてあるラグの感触が当たる。

「ここで、いい?
ベットまで待てない。
ずっとちゃんと最後までしてなかったから、今直ぐに欲しくて堪らない。」

見下ろしてくるナリの表情は、なんだかスッキリした感じに思えた。

「はい…!」


ドキドキしながら返事をする。

ちゃんと向き合ってよかった。
話し合ってわかり合えてよかった。

ずっと一緒にいようね。

その夜、ハルは初めての経験をたくさんした。


スローペースな恋しか、どうやら出来ないふたりらしい。




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