東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
「離してください!!」



私は全身で抵抗して、彼の腕の中から逃れようと努めた。



「それが…渾身の力?弱いぞ」


日頃から軍事演習で身体を鍛える彼にとっては私の渾身の力は赤子程度のモノ。



「離して!!」


彼はニヤリと皮肉な微笑を浮かべて、私を解放した。


背中を見せていた私は振り返って、頬に平手を食らわせる。




「…貴様…俺が誰だとわかってて…叩いてるのか?」


赤くなった頬を手で押さえて、漆黒の瞳で睨んだ。


私は彼の刃のような瞳に一瞬、怯んで後ろに退いた。







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