東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
唾液で濡れ淫靡に光る唇を静かに舌で舐め取る仕草をする御堂中尉。


「…髪が乱れた…使用人を呼んでくる」



彼は富士子さんを呼び戻しに部屋を出ていった。



「・・・」


私自身も唇に指を押し当てて、淫らに濡れた唇を拭う。




* * *



白い黄金に輝くワインで乾杯。

夜会の幕開けーーー・・・



久しぶりの煌びやかな空間。


でも、心からこの雰囲気に酔える状態ではなかった。



「浮かぬ顔だな。貴様の顔を見ているとこっちまで憂鬱になる」


憂鬱にさせてるのは貴方だと口に出したい…感覚に囚われる。


私の隣には伴侶となる御堂中尉は立っていた。

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