東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
軍人がダンスなんてできるのだろうか?


私は不安に駆られながらも…彼と手を取り合った。


彼は社交界にも通なのか軽やかな足さばきを見せる。


楽の調べに寸分の狂いなく…私を導く。



「…さすがは中尊寺家の令嬢…見事な足さばきだな…」


「貴方こそ…ダンスの嗜みはあるようね」



「…貴様を嫁に貰うんだ…軍事演習よりも…師匠は厳しかった…」



「!?」


彼は周囲と完全に同化していたように思えたけど。


不慣れな場所だったらしい。


「いたっ…」


彼の革靴が私の靴のつま先を踏んだ。



彼は足を止めて、一旦、退いた。



「すまぬ。その…大丈夫か?」



「はい」


「・・・」


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