東京ロマネスク~冷酷な将校の殉愛~《完》
満州事変は未来の歴史書通りに満州に駐留する関東軍によって引き起こされた。



「…陸軍の下剋上だ…」



上官、陸軍司令部を無視した若き将校と下士兵たちの無謀な所業。



床に臥した父上は激昂して、新聞をビリビリに破り捨てた。




「最近の若い兵たちは礼儀も知らないのか…たくっ」



「…このご時勢に対して…彼らにも彼らの思う節があるんですよ」



「征史…貴様はこんな輩の味方をするのか?」



「…味方をするわけではありません…父上」


俺は全てを知っていた。


阻止しようとせず、唯の傍観者として見ているだけ。


波打際に立ち…大波にのまれるのを待っていた。



抗いたいが…海里と千愛さんの幸せを思うなら…俺と椿は喜んで犠牲になろう。






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