唇が、覚えてるから

おやすみと言って5分くらいたつのに、呼びかけるとすぐ返事が帰ってきた。

祐樹が真横にいるというシチュエーションのせいで目は冴えているし、せっかくの夜なんだから、眠りにつくまで祐樹と話していたかった。


「お医者さんに、一度でもなりたいと思った理由が知りたくて」


ドキドキしながら問いかけるど、以外にもアッサリ返事が返ってきた。


「なんとなく」


この話題を振ったら、また黙るかと思ってたから少し驚く。


「……そう。なんとなくでお医者さんってすごいね……」

「別に大したことないだろ。手に職って感じでいいと思っただけ」

「男の子らしいよね。そういうのって」

「俺は琴羽の方がすごいと思う。俺みたいになんとなくじゃなくて、目的や意志がはっきりしていて」


どうして諦めちゃったんだろう……。

聞きたいけど……。
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