Only One──君は特別な人──
部屋から数メートル先の玄関まで走って行く。

勢いよく玄関のドアを開けると貴広が立っていた。


「──お邪魔します」

「どうぞ」


貴広は靴を脱いで家の中へ。


「うちワンルームだから、狭くてごめんね」

「そんなことより、今日帰って来るなんて言ってなかっただろ? 教えてくれれば迎えに行ったのに」

貴広とあたしは隣同士に座る。

「ごめん。驚かせたかったの」

「そうか…。理由が可愛いから許してやるよ」

貴広はあたしの頭を撫でた。


「ここまで親に送ってもらったのか?」

「うん。お父さんが運転して、お母さんもついてきたんだよ」

「親と別れた後すぐに男連れ込んでるとは思わないだろうな~」

「嫌だ。人聞きの悪いこと言わないでよ。それに来るって言ったのは貴広だもん」


ふんっとわざとらしく顔を背ける。



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