あの日の恋を、もう一度
「お願い、絢芽ちゃん…!」
「…っ」
「お願い…!」
知世ちゃんのその後押し。
…一体、その中には何があるというの。
でも、ここで行かなかったら。
私は多分、―――一生後悔する。
そんな気がした。
だから、
「…っ」
「絢芽!?」
私は走り出す。
知世ちゃんや河合が追いかけようとしていたけれど、止めたみたいだ。
引退したけれど、元陸上部。
そんな私を追いかけることは、知世ちゃんが無理なので、止めたよう。
『Einmal mehr』その本のタイトルは、ドイツ語だ。
それを訳せば、―――『もう一度』
そんなの、辞書を引けばすぐにわかる。
けど、なかなかひけなかった。
その本の間に何かが入っている。
そんなこと、わかっていた。
何かが入っていると、気づいていた。
そしてそれを開けようとはしなかったものの、わかってた。
でも、知世ちゃん宛てのものかと思い、開けなかったのだ。
でも、それは建前。
表に書いてたのも、知ってた。