砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
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オアシスへの侵入口にかけた呪文はわずかに弱まっていた。

しかし、それは魔の侵入を完全に許すほどではなく……。実際、弱まった部分からリーン目掛けて飛び込んだスワイドは、意識を失ったリーンの横で肉片と化していた。

サクルがリーンの身体に施した護身用の呪文――それはリーンの愛が強ければ強いほど効力を発揮する。

結果から考えれば、嫉妬や疑惑で消え去るほど、リーンのサクルに対する愛情は弱い物ではなかったということだ。

リーンに触れようとしたスワイドが見事に吹き飛ばされたのがその証。

リーンはスワイドの血を浴び、意識を失っていた。身体のどこにも傷はまったくない。無傷のリーンを見たとき、サクルはホッとするあまり地面に座り込んだ。


だが……ほんのわずかでも夫を疑い、スワイドに情を見せたことは明らかだ。

そんなリーンにサクルは怒りを覚える。


(スワイドごときと同じ天秤で比べられるとは……夫である私を信じぬとは何ごとだ!!)


心の中でリーンの迂闊さを叱りつつ、白い夜着を脱がせて汚れた部分を綺麗に拭った。

ぐったりとした肢体はあまりに儚げで艶かしい。それは男の肉欲に伴う情動を突き動かし、サクルはそのままのリーンをテントの中に運び込んだ。


ほんの少し甚振り、すぐに種明かしをするつもりだった。

ところが、目覚めたリーンに中々名前を呼んでもらえず……無言のまま挿入までしてしまう。


(私に助けを求めぬリーンが悪いのだ)


心の中で呟き、どんどん行為を押し進めた。


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