砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
「あ、いや……まあ、どちらにせよ、無事にバスィール国内に送り届けることは確実だ。歳も離れておるし、レイラーが望めば大公の下に送った後、ひとりで戻ってくるだろう。スワイドの行いを思えば、ふたたび会うことは難しいかもしれんが」

「それは……そうかもしれませんね。私が大公陛下……お父さまにお会いすることも、叶わぬかもしれません」


レイラーとスワイドの行いは、間違いなくクアルン王国とバスィール公国の関係にヒビを入れた。

大公はサクルを恐れ、レイラーを国外に出すか、神殿に閉じ込めるだろう。

クアルン王妃の座を自ら蹴った娘を手元には置けないはずだ。


そしてそのことに大公妃が黙っていないことも、容易に想像できる。


(次期大公も頼りにならないとあっては、近い将来、バスィールは荒れるであろうな)


大公一家と敵対するつもりはない。とはいえ、東の大国と手を結び、刃向かってきた場合はその限りではない。

リーンのためにも避けたい事態ではあるのだが……。


「あ、あの、サクルさま……やっぱり、妙な気配がします」


リーンは身を起こしながらテントの外を凝視している。


< 129 / 134 >

この作品をシェア

pagetop