砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
迷うリーンの横から、スワイドが口を挟んだ。


「陛下にお伝えしたきことがございます。何卒、発言をお許し下さい」


言うなり、彼は床にひれ伏した。


「よかろう。話せ」


サクルの許可に「ありがたき幸せ」と再びひれ伏し、スワイドは話し始めた。


「実は……我が妹レイラーに東の大国より縁談がきております。それも、王太子妃に、と」


東の大国という言葉にリーンはドキッとした。


半島と大陸を繋ぐ場所にバスィール公国はある。

公国を挟んで西の半島側が砂漠のクアルン王国、大陸側が東の大国となる。大陸に向かうごとに川が増え、緑も多くなり、たくさんの穀物が実る。気温差も人にとって過ごしやすい範囲だ。

しかし、移動にはかなり手間のかかる地形をしており、しかも雨が多い。多くの国と陸続きで国境を接しているせいか争いが絶えず、また流行病の侵入も頻繁だった。

砂漠の民が豊かな水や緑に憧れるように、彼らもまた、砂漠の地に畏怖と憧憬を抱いていた。

その思いは国内が平定されると、自然に高まるようだ。その度に、彼らがどうにかして半島に攻め入る手段を考え始める。


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