砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
~*~*~*~*~


「スワイド、ここが私にとって大切な場所と知りながら、血で穢したのか?」


リーンに急かされ駆けつけたものの……。

まさか、アミーンがシャーヒーンを救おうと飛び込み、こんな厄介なことになっているとは思いもしなかった。


カリムの姿を見て、シャーヒーンは申し訳なさそうに目を伏せる。

アミーンの様子から見て、どうやら衛兵の部隊長は彼に伝えていなかったようだ。正妃の警護はシャーヒーンに任せているので湯殿には近寄るな、と。

シャーヒーンの正体はほとんどの者が知っている。だが、変化の瞬間を目にした者は少ない。

それは見る者によっては禍々しくもあり、神々しくも映る。

サクルにとっては後者だが、前者には少なからず精神状態に影響を与えるようだ。余計な問題を増やすまいと人払いをしただけだったが……。


(どうやら、部隊長はアミーンを信用しきっていないようだな)


サクルの策略を知り、アミーンがスワイドを逃がす、あるいは、味方することを案じたらしい。

真面目なアミーンのことだ。

人の少ないことを不思議に思い、結果、湯殿に踏み込んだと見える。


「わた、私は……その侍女に誘われて、ここに……。そこをアミーンにみつかり、私のせいにして短剣を抜いて斬りかかってきたので……」


< 49 / 134 >

この作品をシェア

pagetop