砂漠の舟 ―狂王の花嫁―(第二部)
スワイドはシャーヒーンが話せないのをいいことに、嘘八百を並べ立てる。


「そうだろう、アミーン。お前はこの女の悲鳴を聞いたのか? 聞いてないよな?」

「ち、違います! シャーヒーンはわたしを助けてくれたのです。そんな」


サクルの背後からリーンが口を挟んだ。


「黙れ! あ……いえ、正妃様は何か勘違いをされておられるのだ。第一、正妃様がおられぬ間の出来事。おわかりになるはずもない」


シャーヒーンが何も反論できないのをいいことにスワイドはさらに言葉を続ける。


「こ、このアミーンも同じです。勘違いして己の身分も考えず、私に刃を当てたのだ。陛下はお許しになられたが、そもそもこの男が我が妹を連れ出さねばこのような事態にはならなかった! 私が兄としてこの男を処断するのは当然のことだ!」


スワイドの憐れさにサクルは失笑を浮かべた。


「よかろう。ではリーン、お前はどちらが偽りだと思うか? 私は罪を犯した者を罰することにしよう」


サクルの問いかけにリーンは困り果てたような声を出す。


「わたしの知っていることは、先ほどお話しいたしました。その後のことは……でも、シャーヒーンがそのような女性でないことは陛下もよくご存じのはず……」


リーンはそれ以上言葉にならなかった。はっきり断言すれば、兄であるスワイドを罪に落とすことになる。そのことがわかっているのだろう。


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