神様修行はじめます! 其の三
魔犬の集団が分かれて、あたし達仲間のそれぞれに襲い掛かる。


あたしと門川君に向かってくる相手は、どうやら一匹だけ。

ふん、あたしもナメられたもんだね!


あたしは術の発動に時間がかかる未熟者だから、一瞬で距離を縮めてくる敵は苦手なんだけど、今回に限っては・・・。


―― ゴオォッ!! 

魔犬の全身が紅蓮の炎に包みこまれる。

手前数メートルの距離を保つ余裕で、滅火の力が快調に発動した。


こちとら、さっきから頭に血がのぼってるからね!

あの強欲ババの卑劣な行為のせいで、天内の血が怒りに燃え滾ってる!


開店準備完了! なんっぼでも来いや!

飛んで火に入るなんとかだ! 固形燃料変わりに着火してやる!


炎に焼かれた魔犬が断末魔の声を上げ、地に落ちた。
と、次の瞬間・・・


―― ギャアオォォ! 

雄叫びと共に新たな魔犬が、その後ろから飛び掛って来た。


予想外の来襲に、あたしは反射的に後ろに仰け反る。

前の魔犬の体に隠れて、もう一匹の存在に気付けなかった。


ちっ、連携プレーか? 
味な真似してくれんじゃん、固形燃料の分際で!

わざと接近させて、こいつの体に直接滅火の炎を喰らわせて・・・!


―― キイィンッ!


頬の横を、痛いほどの冷気が走った。

目の前の魔犬の喉笛に、ドス!っと白く輝く刀が容赦なく突き刺さる。


「・・・へ?」

あたしの顔の横ギリギリ、頬に接触するほどの近さで、背後から突き出された刀を唖然と見る。


冷気の煙立つ、透き通るように美しいこの刀は・・・


「情けないぞ天内君。注意力散漫だな」


隠す物の無くなった美貌を完全にさらけ出した門川君が、刀を手にしていた。

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