神様修行はじめます! 其の三
しま子の大きな体は、赤い花柄の綿入れハンテンにぬくぬくと包まれている。


あたしが用意して着せてあげたの。


だってこの雪景色の中、トラ縞パンツ一丁じゃ可哀想だもんね。


「花柄ハンテン姿の鬼も、同じくらい可哀想だと思うがのぉ」


「ハンテンだけじゃなくてニット帽にも注目して! あれも可愛いでしょ?」


「・・・・・」


あのニット帽もあたしが用意してあげたの。


だってしま子、ツノは生えてても毛は一本も生えてないんだもん。


じー様、よく言ってたもんなぁ。


年々薄くなる頭に冬の木枯らしはキツイって。


やっぱり頭の防寒は重要よね。あの大きな毛糸ボンボンがポイントよ!


得意になるあたしに、絹糸は半目になってスタスタ先に歩き出した。


ちょっとー、なによその無言の抗議は。


ブーツで足元の雪を踏みしめながら、あたしは慌てて後を追った。


しま子もハンテンの袖をパタパタさせながら、上機嫌で追いかけてくる。



冬の日本庭園。


庭木も、建造物も、全てが白い雪にすっぽり覆われている。


わずかばかりの色彩はあっても、ほとんど墨絵の世界だ。


白と黒の濃淡の世界。


鏡のようだった大きな池の色も、くすんだ灰色になって。


庭の中で、唯一鮮やかな色彩の錦鯉たちが・・・


錦鯉たちが・・・・・。


池に張られた氷の上を、スピードスケート選手ばりの勢いでビュンビュン滑走している・・・。

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