神様修行はじめます! 其の三
宙を飛ぶだけならまだしも、冬になったら滑るのか。ここの鯉は。


まぁいいけど。本人達は楽しそうだから。


普通じゃない人生を極めるのも、ひとつの道だよね。うん。


「そんな格好しとるお前が、普通うんぬん言えた義理ではなかろうが」


絹糸が歩きながらチラリとあたしの全身を見上げる。


・・・なによ? このピンクのダウンコートに文句でもあるの?


「いや、実はあたしもブラウンの方と迷ったんだけどさ、あっちはちょっとデザインが・・・」


「誰がデザインとカラーの話をしておるか」


「じゃあなにが問題?」


「いかにも現世丸出しの格好でウロついては、門番が警戒するのも道理であろう」


「あー、あのコマ犬ブラザーズ。毎回、困ったもんだよねー」


「どちらかというと、困ったもんなのはお前の方じゃ」


「うん、ほんと困ったよ。ねぇ、IDカードとかって作れないの?」


「・・・・・」


「あの狛犬ブラザーズ、人の話ぜんぜん聞かないしさ」


「・・・お前もじゃ」


唇を尖らせて、あたしは絹糸にブーブー文句をたれる。


そう。前回の当主就任の事件が終わって、それから・・・


あたしは、現世とこちらの世界を行ったり来たりする生活になった。

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