神様修行はじめます! 其の三
「母上の一族の境遇については、ずっと胸を痛めていたんだ。本当に安心したよ」


「なかなか賢しげな小僧であったの」


「そうですわね。きっと頼りになる人物に成長してくれますわ」


門川君は本当に嬉しそうに頷いた。


よほど一族の事が気掛かりだったんだろう。


今日、凍雨君と会えてやっと胸のつかえが取れた思いなんだろうな。


ほら、険しい道のりだけど、良い事だってあるもんね。


希望はあるんだ。どこにでも。


だから暗くならずに前進するのが大事だよ。


自分で自分を追い込んじゃダメだよね!


和やかに談笑しながら雪道を進んでいく。


カボチャの牛車が高性能なのか、セバスチャンさんのたずな捌きが優秀なのか。


道中はなかなか快適だった。


「皆様、端境(はざかい)の屋敷へ到着いたします」


お? 着いたの?

セバスチャンさんの声に、あたしは身を乗り出して外を伺う。


・・・おぉ―――っ!


あたしは目を丸く見張った。


まず目に付いたのは、立派な頑丈そうな塀。


広~い敷地全てを塀がグルリと囲んでいるんだ。まるで堅牢な城壁!


塀の彼方に、かなり大きそうな屋敷の屋根が見える。


意外!

門川専属の家来だっていうから、もっと小規模なものかと思ってた。


こりゃたいしたモンだわ~!!


「雲行きがあやしくなってきましたね」


セバスチャンさんの声に、あたしは空を見上げた。


さっきまで青空が見えていたのに、いつの間にか灰色の雲が重く垂れ込めている。


そう。ここの冬の空はすぐ変わる。


青空や太陽なんてアテにならないんだ。


目に見えていても、あっという間に雲に隠れて消えてしまう。


そして降り出す・・・冷たい雪。


「急いで屋敷へ入りましょう」

セバスチャンさんがたずなを捌く。


あたし達を乗せた牛車が、大きな大きな塀の中へ滑り込んでいった・・・。


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