神様修行はじめます! 其の三
門を通ったあたしは再び目を見開く事になった。


・・・あれ―――!?

雪、無い!


あたしは後ろを向いて確認した。


塀の向こうは確かに白銀の世界。


果てなく続く積雪の景観が見えている。なのに・・・


門から一歩敷地に入った途端、雪のゆの字もない。


地面にも、建物の屋根にも、木々にも、ひとかけらも積もっていない。


「なんでなんで――?」


「言うたであろうが。端境は結界を司る一族じゃと」


「それとこれと何の関係があんの?」


「雪が降らぬよう、この空間を結界で保護しておるんじゃよ」


「へ~、そりゃ便利だね! 門川もそうすればいいのに」


「おばあ様が、四季の移ろいを愛でたんだ。わざと雪を降らせるままにしてあるんだよ」


ふーん。そっか。綺麗だもんね。


ひらひらと純白の雪が風に舞い落ちる様は、あの儚さは、独特の叙情がある。


日本人の繊細な感性に訴えかける、美があるよね。


すごく寒くて厄介だけど。


それに積もるとなると、もう、どこまでも積もっちゃうし。


「門川屋敷の敷地内は、基本的に積雪は心配ないからのぉ」

「・・・あー、アレね?」


あたしは納得しながら思い出す。

アレと初めて遭遇した時の驚きを。


そう。アレとは、つまり・・・・・


門川は冬になると、敷地内に『レインボー熊』が発生する。


熊なの。熊。

それも白熊じゃなくて、レインボー。

七色の熊。

< 86 / 460 >

この作品をシェア

pagetop