神様修行はじめます! 其の三
雪が降り積もるとね、どこからともなく七色の熊が現れるの。


そんで、敷地内に積もったばかりの柔らかい雪をムシャムシャ食べまくる。


雪が主食の熊なんだと。


初めてその場面に遭遇した時は、恐怖のあまり気を失いかけた。


だって熊だよ熊!

目の前に大きな体格の熊が何頭もウヨウヨと!


「あんなのが発生するんなら、前もって教えておいてよね」


「雪しか食わぬ奴らでの」


「それに彼らは、犬猫よりおとなしい性質なんだよ」


にしたって、熊に取り囲まれたんだよあたし!


命の危険を感じて当然の状況だよ! 発狂しなくて良かった!


しかも、なぜかとってもカラフル。


赤とか青とか黄色とか、数色混じったマダラなのとか。


妙に発色の良い蛍光カラーな熊なんて、もう、異常の極み。怖さ倍増。


「普通さ、保護色っていって周囲と同じ色にならない?」


「奴らに天敵はおらぬのでな」


「それに彼らは視力があまり発達していないんだ」


「どゆこと?」


「保護色だと、気が付かずに仲間同士でぶつかり合って怪我をしてしまうんだよ」


「脳震盪をおこして失神した熊が、昔は庭のあちこちで伸びとったわい」


「・・・どんくさー・・・」


「身を守るために進化して、どんどん豊かな配色になったんだ」


お陰で敷地内は、必要以上に雪が積もってしまう事もなく、雪害とは無縁。


熊さまさまだ。


でっかいお尻でドチンと雪の上に座り込み、両手で器用に雪にかぶり付く。


最近ではその姿に愛着まで湧いてきた。


七色全部揃った体の熊を見た日なんか、ラッキー!って感じで。


うーん、あの光景を見れなくなるのも寂しいしね。


やっぱり今のままでいいのかも。
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