神様修行はじめます! 其の三
「端境が当主、典雅(てんが)と申しまする」


独特の口調の挨拶。頭のてっぺんから声が出てるみたい。


「ささ、門川当主様、どうぞ屋敷の中へ」


バカ殿平安バージョン氏は、立ち上がって腰をかがめ、あたし達を中へ案内してくれた。


「ね、ねぇ絹糸、この人って大丈夫?」


あたしはマロ当主さんの背中を盗み見ながら、こっそり絹糸に囁きかけた。


まさか突然あの格好で宴会芸を披露し始めたりしないよね?


あの人、見たとこ30才くらいのいい大人でしょ?


そんなアホな真似された日には、10代の少女はどう反応すりゃいいの?


「あれはいたって正常じゃよ。安心せい」


「安心とは程遠いほど、アレは衝撃的なんだけど・・・」


「衝撃の度合いで言えば、岩とて似たようなもんじゃろうが」


あぁ、そっか。そうだね。


ベクトルは違うけど根底は同じというか、確かに同じ穴のムジナの臭いが・・・。


「失礼な! わたくしのポリシーとアレを一緒にしないで欲しいですわ!」


「ジュエル様、もう少し小声でお願い致します」


セバスチャンさんの静かな指摘に、お岩さんが慌てて咳払い。


そして小声で聞いてきた。


「でも本当にあの方、なんであんな珍妙な格好をしてますの?」


お岩さんが珍妙って言い切るのも、なんだかな~な気もするけど。


でも確かに疑問。


こっちの世界は現世に比べると、純和風で統一された世界。


それでもマロ当主さんみたいな格好してる人は、今まで見たこと無い。


マロ当主さん単品だけじゃない。


こうして周りを見てみると、風景全部が平安朝。
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