神様修行はじめます! 其の三
御簾や、きちょうや、屏風なんかで緩やかに仕切られた屋敷内。


どの調度品もちょっと古ぼけた印象で、お世辞にも高級感は感じられない。


でも空間全体のおおらかな開放感が、どこか優美さを漂わせている。


お付きの人達も男女全員、平安風な衣装とヘアスタイル。


やっぱり高級な生地ではないみたいだけど、気分は源氏物語。


まさに教科書に載ってたあの挿絵の世界だ。


ほへ~、あの絵の世界が目の前で展開しているみたい。


「端境は、門川と並び称されるほどの一族じゃった。それが今では・・・」


「ただの家来に没落してしまった?」


「当時の栄華を維持する力は、失われてしもうた。血統の古さ以外に縋るものがないのじゃよ」


ふ――ん。

それでわざとこうやって、古めかしい世界を作り上げている?


ん―、気持ちは分かるけど。


「建設的じゃありませんわね」


あっさりとお岩さんが切り捨てる。


「歴史は尊重すべきですけど、固執しては本末転倒ですわ。枠に囚われては明るい未来は訪れませんわよ」


あたしもお岩さんの意見に賛成だな。


なんか健康的じゃないよ。これって。


自分が好きで選んだ生活スタイルってわけじゃないんでしょ?


お岩さんの言った通りだ。ポリシーが違うよ。ポリシーが。


「若いお前らには、まだ理解できぬものがあるのじゃよ」


「いじましいだけにしか見えませんわ」


「悪いけどあたしもお岩さんに一票」


「やれやれ。お前ら、そんな事を口に出して・・・」


「言いませんわよ。いくらなんでも」


さすがにそんな事しないよ。いくら腹の中で思っててもね。


それくらいはちゃんとわきまえてますって。
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