サイコーに不機嫌なお姫様。
部屋に帰ってきても膨れっ面のなお。
「……なおちゃん、逆ギレはするなよな?」
…………………。
シカトかよ。なおの言いたいことは分かるよ。でも少しは……俺のことも分かってほしいんだよ。
「なーお! 何か言えよ」
近づいて手を握ろうとした瞬間、また手を払われる。
さっきから腕を掴んでも何も言わないのに……何で手だけは……
強引に腕を掴んで、なおの手に触れた。
「やっ……! 見ないで!!」
すごい抵抗。でもその腕を離さない俺。だって……
「……何でこんなに手、荒れてんだよ?」
ずっとばれないようにしていたのか、全く気付かなかったけど。皮はむけてガサガサ。一部は血がにじんで、誰がどう見てもひどい状態。
「美容師は通らなきゃいけない道なんだよ。アシスタントはシャンプーばかりだし」
「これじゃ水も使えないだろ?」
……て。あれ?
「もしかして手抜き料理とか外食ばかりしていたのって……手をかばっていたから?」
「こんな汚い手で作っても気持ち悪いでしょ。慶一郎はよく効く軟膏を持って来てくれたんだよ」
うわ……何だよ。
俺、かなり最低な奴じゃん。