なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 女性用トイレは一つしかない。そして誰も入っていない。

 私は一体ここで何をしているんだ? 

 トイレにも入らないで壁に張り付いてるのってどう考えてもおかしいでしょうよ。


「並んでますか?」

 キョトンとした顔で私を見て話しかけてきた例の女性は、やはり不思議そうな顔をしていた。

「......いえ」

 首を振る私に微笑むと、失礼しますと言ってトイレに入って行った。小柄でちょっとぽてっとしてて可愛らしい人。憎めないようなタイプの子だ。

「マスター、何も言わないでね」

「何をですか?」

「夏菜のこと」

「...あぁ...はい」

「もう別れてんだよね」

「...そうですか」

「そ。だからさ、秘密ね」


 信じらんない、何ソレ。


 今言われた言葉が頭の中で回っている。瞬きをぱちぱちしてみたけど耳に届いた声は訂正できない。

 身体が熱くなって、心臓が激しく血液を送り続ける。


『もう別れてんだよね』ですって?


 もう別れてる?


 きっとさっきの女の人にはそんな風に言ってたんだ。

 そして今日こうやってここに来ることも、私に喧嘩をふっかけて家から出させることも、全部仕組んでたんだ。


 なんて腹立たしい。悔しい。悔しくて涙が出そうになる。


 泣くな! これはきっとお酒のせいだ。

 こんなことで泣くような私じゃない!





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