なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
手をグーにして力を込めた。身体が小刻みに震えている。
悔しくて悲しくてなんだかバカみたいで、どうしていいか分からなかった。ここから飛び出していって問い詰めたいって気持ちもあるけど、あるだけで怖くてそんなことできない。
そんな勇気は私には、無い!
胃の奥がぐつぐつ沸騰しているような、熱く鈍い痛みは不快でしかない。変な汗まで出てくるし。
「あ、俺もちょっとトイレ」
真が携帯を片手に席を立った。
マスターが一言声をかけたが、戻って来たらトイレ行ったって伝えてと言うと、こっちに向かってどんどん近づいてきてる。
客席側には壁一面に鏡が広がっていて、私の今いる場所からはカウンターに座る客が全部見える造りになっている。
このバーは縦に長い造りになっていて、ダークブラウンの重圧感のある一枚木のカウンターテーブルが広がっている。
シックな証明がカウンターの真上からその席にだけ照らされるので、隣の人はあまり気にならない。
そんな気遣いもまたいいんだけど、今回に限りそんなこと言ってる場合じゃない!
上手い具合にここからだと死角になっているので真からは見えない。
これもマスターの客側に立った時に出たアイディアの一つらしい。
やばいと下唇を噛んで鏡越しに私を見てるマスター。だけど、私の方がどうしようって動揺しちゃうよ。
すぐそこまで来てる。左右を見回すけどどこにも逃げ場は無い。女性用トイレだって例のあの女性が入ってるし。男性用トイレに入るわけにもいかず...
修羅場だな。このままだと完全に修羅場だ。
更に壁にぴったりと背を預け、無駄に横歩きで奥の方へ逃げてみる。でもその奥が男性用じゃん。泣くしかないよもう。
覚悟をしたそのとき、目の前が暗くなって誰かに勢いよく肩をつかまれ、壁にべったりついていた背中に空間ができて、そこに手が滑り込んできた。